日本人に大人気の国、タイ。人気の旅行先として常に上位にランクインしていることはよく知られているとおりですが、物価の安さや温暖な気候、日本人にとって暮らしやすい環境が整っていることから「住みたい国」としても挙げられています。
タイで暮らすにはビザを取得する必要がありますが、今回は、50歳以上に限り取得できる「リタイアメントビザ」についてご紹介します。リタイア後のタイ移住を検討している方はぜひお読みください。
タイのリタイアメントビザとは?

(1)リタイアメントビザとはどんなビザ?
リタイアメントビザとは、タイに1年間滞在できる(更新可能)退職者向けのビザで、「ノンイミグラントOビザ」や「年金ビザ」などとも呼ばれています。
名称のとおり、仕事を退職した方を対象としたビザのため、現地での労働は許可されていません。また、永住権とも異なるので、混同しないようにご注意ください。
(2)リタイアメントビザとロングステイビザの違い
なお、このリタイアメントビザは、タイ国内にて取得するビザです。類似した名称のもので『ロングステイビザ』というものもありますが、こちらは日本で渡航前に取得するビザとして区別します。取得条件や取得方法も異なりますが、一般的にはタイで取得するリタイアメントビザの方が、ロングステイビザよりも取得方法が簡素です。
リタイアメントビザの発行条件とは

タイ政府は、タイのリタイヤメントビザの取得条件を下記のように定めています。
(1)年齢要件
50歳以上であること。
(2)資産要件
下の(1)〜(3)のいずれかを満たしていること。
① 直前の3ヶ月80万バーツ(約280万円)以上をタイ国内の銀行に預金していること
② 毎月の年金収入が6万5000バーツ(約22万8000円)以上であること
③ 預金および収入の合計が80万バーツ(約280万円)以上であること
※1バーツ≒3.5円(2018年12月)
このほかに、疾患歴や犯罪歴などによる基準もありますが、大きな基準としては上記の①年齢②資産の2点となります。
※2019年3月1日より、リタイヤメントビザ(ロングステイビザ)において新たな規則が施行されました。『①の直前の3ヶ月80万バーツの預金』に加え、『更新後も最低40万バーツ以上預金』をしていること。が必要となりました。
※2019年10月31日から日本などでリタイヤメントビザ(O-A)を取得する際に『医療保険に加入』が義務付けされました。(外来で4万バーツ以上、入院で40万バーツ相当の保険をかけることが必要)
タイで取得、更新を行っている人は、カテゴリーOのためその対象ではありません。
(3)マレーシアの類似ビザ「MM2H」
ちなみに、隣国のマレーシアにも、リタイアメントビザに相応する「MM2H」があります。こちら、年齢要件はありませんが、資産要件として1000万円以上の財産証明や450万円の銀行預金などが必要となります。
資産条件のみで単純比較すると、タイのリタイアメントビザは障壁が低いといえますね。
(4)資産のみクリアしている場合
なお、「年齢を満たしていないが、資産はある」という方の場合、このビザの発給資格にはなりませんが、別のビザを取得する方法もあります。ここでは説明はしませんが「投資家ビザ申請」や「エリートカードの取得」などで調べてみてください。
リタイアメントビザでの滞在可能期間

シングルエントリー(再入国不可):3カ月間
マルチプリエントリー(再入国可):1年間
規定額(80万バーツ)を満たす預金をしてから3カ月以内の申請の場合、暫定ビザが3カ月発給されます。そして3カ月後に再度残高が規定額以上あることを確認してから残りの正式なビザが発給されます。
80万バーツ以上の預金をしてから3カ月以上経過している場合は、1年分のビザが発給されます。また、その後もビザを更新することが可能です。
リタイアメントビザの申請方法

(1)申請にあたり用意するもの(7つ)
リタイヤメントビザの取得には、下記の7つの書類や料金が必要です。
(1)資力証明書類:下記のいずれか。※いずれも英文書類で、原本とコピー(2部)
①タイ国内の銀行口座の過去3カ月分の預金通帳のコピー+現残高に関する銀行発行の証明書
②月6万5000バーツ以上の年金受給収入がわかる証明書
③タイ国内の銀行口座の預金と年金受給の合計が80万バーツを上回ることの証明書
※残高証明の発行は、銀行にて100バーツ程度の手数料がかかります。
(2)海外からの外貨送金証明書
(3)パスポート(有効期限が6カ月以上先かつ、査証欄に2ページ以上の余白があるもの)
(4)申請者本人のカラー写真
(5)規定の申請書(在日本タイ大使館のWebサイトでダウンロード可能)
(6)英文経歴書(在日本タイ大使館のWebサイトでダウンロード可能)
(7)申請料:2000バーツ
※日本国籍以外の方の場合は、別途書類が必要になりますので大使館Webサイトで確認してください。
(2)申請場所
タイ国内のイミグレーションオフィス(入国管理局のことで、タイ語では「トーモー」もしくは「ソートーモー」と呼ばれます)バンコクのイミグレーションオフィスは、都心部より北に20kmほど離れたエリアにあります。
BTSモーチット駅、もしくはMRTチャトチャックパーク駅から52番バスに約20分ほど乗ると近くまでたどり着き、そこからバイクタクシーもしくは徒歩で向かうのが一番わかりやすいルートです。
イミグレーションオフィスは常に混雑しており、長いときは数時間待つこともあります。できるだけ朝一番(8:00)に間に合うように到着するとよいでしょう。
<バンコク イミグレーションオフィスの住所>
Chaeng Watthana 13 Yaek 3-2-15 Thung Song Hong, Lak Si Bangkok 10210
※パタヤ、プーケットにもあります
(3)申請が無事に受諾されたら
リタイアメントビザが発給されます。発給されたリタイアメントビザには、ビザの有効期限が記載されています。今後さらに期限を延長する場合も、ビザの有効期限を絶対に超過しないように期日を忘れないようにすることが大切です。
タイ銀行口座の開設方法

上記でお伝えしたように、タイ国内の銀行口座に預金をする必要があります。まだタイの口座を開設していない場合、下記の要領で口座を開設することができます。
(1)持参するもの
①パスポート:(コピー・原本)
②タイバーツ:(口座開設をする銀行によっても異なりますが、開設手数料と最初に入金しておく現金も併せて3000バーツ程度は持っていきましょう)
③戸籍記載事項証明書
戸籍謄本:6カ月以内に発行されたものを持参し、大使館で「証明発給申請書」を記載し発行できます。
※これまで、日本大使館で発行された「運転免許証抜粋証明」があれば口座が開設できたのですが、現在は「戸籍記載事項証明」の取得が必須となっています。
ビザを取得していない場合は、同じ銀行にすでに口座をもっている人が同行することで、よりスムーズに開設できることが多いようです。信頼できる知り合いがいる人は、同行をお願いしてみるといいでしょう。
また、住所や連絡のつく電話番号も申請時に必要となりますので、覚えていない場合はメモしたものを持参することをおすすめします。
(2)行き先
口座を開設したい銀行のカウンターに行きます。
銀行によっては、日本語対応スタッフが常駐しているところもあるので、心配な方は日本語対応スタッフがいるかを窓口で確認し、対応してもらいましょう。
銀行のカウンターは15〜16時頃で閉まってしまいます。また長時間待つこともあるので時間に余裕をもって行動しましょう。
タイの主な銀行 ※(通称)
・Bangkok Bank (バンコク銀行)
・Krung Thai Bank(KTB銀行・クルンタイ銀行)
・Siam Commercial Bank(SCB・サイアム商業銀行)
・Kasikorn Bank(Kバンク・カシコン銀行)
・Bank of Ayudhya “Krungsri” (クルンシ・アユタヤ銀行)
リタイアメントビザに関するQ&A

【Q1】自分ですべての手続きをこなすのが不安な方なのですが?
リタイヤメントビザの申請サービスを行ってくれる業者があるので、そういった業者に依頼をするのもよいでしょう。
手数料は1万バーツ程度のところが多いようです。ただし、全て業者が行うのではなく申請にあたっての必要書類の取り寄せ等はご自身で行う必要があります。
【Q2】所有資産が80万バーツ(約240万円)に満たないのですがどうすればいい?
また、所有資産が最低限度額(80万バーツ)に満たない場合、一時的に預金用資産を貸与してくれる業者もあります。もちろん代行手続き料金はかかりますが、どうしても必要な方は検討するのも一つの手かもしれません。
【Q3】預金残高証明は、家族名義のものでも有効ですか?
申請者本人名義の口座である必要があります。口座を所有していない場合は、ご自身の名義で口座を作り預金を移しましょう。
【Q4】預金残高証明は、いつの時点のものが必要ですか?
最新版のものを提出する必要があります。できる限り、申請当日もしくは前日に取得するようにしましょう。イミグレーションの建物内にも銀行支店はあるので、当日にあちこちへ行く必要はありません。
また、残高証明書の有効期限は基本的に1週間なので、あまり先立って用意しておくと、うっかり期限が切れて取得しなおさなくてはならないことになるので注意が必要です。
この記事のまとめ

リタイアメントビザは、
・仕事を退職したかた向けのビザ
・似たビザに「ロングステイビザ」がある
・リタイアメントビザはタイ国内で取得するもの
・年齢要件:50歳以上であること
・資産の条件もあること
いかがでしたか? リタイアメントビザの取得を検討している皆さんに少しでもお役に立てていたら幸いです。
ただし、制度の内容や条件は予告なく変更されることがあります。必ずご自身で最新情報を確認の上、必要に応じてしかるべき機関へ問い合わせるようにしましょう。
また状況によっては想像以上にビザ取得まで時間がかかることもあるので、時間に余裕をもって準備を行ってください。
タイでの滞在生活が、安全で楽しいものになることを願っています!